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相場投資のリスク管理
大ベストセラー「金持ち父さん、貧乏父さん」の中でロバート・キヨサキは、「投資はプラン」であると書いています。
同時に「証券投資は投資ではない(プランが立たないので)」とも言っています。
これは彼が得意な不動産投資ほど証券投資に詳しくなかったための発言だと自分は考えています。
それは「リスク管理によって証券投資でプランを立てることもできるから」です。
では、「証券投資を投資(プラン)にするリスク管理」とはどういうものなのでしょうか。
このページではリスク管理の説明のために以下の5つのことに触れます。
なぜリスク管理が必要なのか?
システムトレードでなくても、相場の世界は売買の経験が非常に大きな意味を持つ世界です。
売買の経験が増えるほどリスク管理などの技術
(ここで言うのは相場観などの直感ではなく技術)を身につける可能性があがります。
同時に、長期的に売買の経験を積むために必要なことは、資金がなくなってしまわないこと、
資金が無くなるようなリスクを取らないことなのです。
運用資金がなくなると売買そのものが出来なくなってしまいます。
資金がある限りは経験を積み上げ技術を身につけることが出来るのです。
そのためにもっとも大切なのがリスク管理なのです。
自分ぐらいが表現しなくても名著「マーケットの魔術師」にもほぼすべての人が「リスク管理が最重要」と書いています。
自分は「相場にとって最重要はなんでしょうか?と聞いたとき、リスク管理と答えない人をあまりプロとは見なしません」
もう一度言います。もっとも大切なのがリスク管理です。
決定的敗北の基準とは
一般に口座資金の20%を失う状態のことを、決定的敗北(資金ショート)と定義します。
これは多くの著名トレーダーにおいて、およそ妥当だと言われていることですし、多くのヘッジファンドでも、マイナス30%を償還基準としています(もっとも、これはハイウォーターマークによる報酬計算という側面も大きいですが、償還基準が原資の100%欠損という時点で、詐欺的なファンドと考えたほうが良いです)。
一時的に元金の20%の資金減少(負け)があり、再び20%の利益(勝ち)を出すことが出来たとしましょう。
利益のほうは減った後の資金の20%という意味です。
すると、その結果、元資金の96%まで、資金が回復することになります。
※(80%[損失後の資金]×20%[利益]+80%[損失後の資金])
結果として、4%の資金を失うだけで済みます。
しかし、それ以上(たとえば30%)の資金減少(負け)が一時的にあり、
再び同レベルの利益(勝ち)を出すことが出来たとしても、金は結構なダメージを受けることになります。
30%の損失の後、30%の利益を出すと、91%までしか資金は回復せず、なにもしないままに10%の資金を失うことになります。
勝率のこと
一般に、株式市場に参加した人の90%は半年で口座資金を失って辞めていくと言われています。
逆に考えると、相場に参加している人の中で半年以上生き残っている人は10%程度であるとも言えるわけです。
多くの方々は
「相場の中長期的な勝ち負けは、相場観の当たり外れで決まる。その相場観が当たって勝ち残ったのが10%の人たちである」
と考えてしまうのではないでしょうか?
はっきり言って、それはまったくの見当違いです。このページで数学的に証明してあります。
それではまず、ご自身の過去の売買の勝率を計測してみて下さい。
(印象とはかなりかけ離れた数字になることが多いものです。勝率に限らず、自分の過去の売買の状況をちゃんと計測するということが、 一般個人投資家の方々の中ではほとんどなされていません。でも、ここを超えないと絶対に上達しないので、なんとか自分の姿と向き合って下さい。歌手になる勉強をする当初に、自分が歌っているのを録音して聞いてみるのと同じぐらいの勇気が必要です)
勝率とは、過去の売買結果を記録し、 実際に利益を上げた売買の回数を、
実際の過去の売買回数の総計数で割った比率を言います。
勝率=利益をあげた売買の回数÷過去の売買回数の総計数
どうでしょう?勝率50%を超えましたか?
実際のところ、長期的には全ての人に勝率50%は保証されています。
どうするかというとサイコロで銘柄番号を選び、
サイコロでその銘柄を買うか買わないか(偶数や奇数で)を判断すればいいのです。
その上で「次の日の朝一番にその銘柄を買って、
同じ日の最後に売る」ことを繰り返すと、長期的に何百回も売買を繰り返していくうちに
全ての人は等しく勝率50%になります(実際は株式市場などではわずかにプラスになると思いますが・・・)
つまり、自分の過去の勝率を計測した時、みなさんの過去の勝率が50%を超えていなければ、
サイコロで売買を決定をした方が良いということになります。
まさに「下手の考え休むに似たり」です。
厳しいことを言うようですが、津島の裁量売買成績は一貫して勝率20%程度です。
(逆の意味ですごいことですか?(笑)
利食いと損切り
しかし、過去の勝率が低くても結果的に勝っている人はいます。
逆に、勝率が高くても結果的に負けている人もいます。
では、この差はどうして生まれるのでしょうか?
実は相場の中長期的な勝ち負けには勝率や相場観などはほとんど関係なく、
「もっと別のふたつの要素が非常に重要」なのです。
そのうちのひとつが「利大損小」です。
大切なのはことわざ通り「利益は大きめに、損失は小さめに」ということになります。
たとえば、
過去の勝率50%(サイコロ並)の人が、含み益15%の時点で利益を確定(利食い)し、
含み損10%で損失を確定(損切り)するとします。
具体的には
「100万円で買った株は、115万円になるまで待って売り(利食い)、90万円になったら売る(損切り)」
ということです。
すると、この人は勝率50%で10回売買すれば5勝5敗ですから、
(15%×5回)+(-10%×5回)=+25%(プラス25%)です。
次に過去の勝率80%の人を想定します。
勝率80%なら、かなりの高い勝率だと思いますが、
利食いと損切りの関係が悪ければ負けるのは難しくありません。
たとえば
「100万円で買った株は、105万円になるまで待って売り(利食い)、70万円になったら売る(損切り)」
とすると、
(5%×8回)+(-30%×2回)=-20%(マイナス20%)
となります。
勝率50%の人に遙かに及びません。
これは統計を味方にしているシステムトレーダーであれば誰でも知っていることです。
(だからこそシステムトレードでは勝率などよりも「総利益÷総損失(プロフィットファクター)」を重視するわけです)
資金管理
さて、今度はこの2種類の勝率の人について、リスク管理をしながら口座残高までを含めて計算してみます。
さて、この勝率80%の人が2回連続で負ける確率は、
20%(0.2)×20%(0.2)=4%(0.04)になります。
1日1往復の売買をしていれば、25日×4%=1日
つまり、25営業日に1回これが起こることになります。
1ヶ月はおよそ20営業日強ですから、勝率80%の人でもおよそ月に1回弱の割合で連敗するわけです。
では、この人が信用取引(自己資金以外の借入金を加味して売買する取引)で、
余力一杯のトレードをすると考えます。
証券会社や銘柄にもよりますが、信用掛目は33%ぐらいですから、
自己資金100万円で300万円の売買が出来ることになります。
(200万円を借り入れているのですね)
さらに仮定して前項の反省をふまえ、この人は勝率80%である上に、
利食い15%、損切り10%と決めていたとします。
まとめると、
●「勝率80%の人」
●「100万円で買った株は、115万円になるまで待って売り(利食い)90万円になったら売る(損切り)」
●「100万円の口座資金で、1銘柄を全力で信用買いする(1日1往復)」
という3っつの条件下での計算をしてみます。
1回の負けでの負け金額は、300万円×10%=30万円になり、売買資金は270万円になります。
2連敗しますと、負け金額は270万円×10%=27万円となります。
自己資金100万円でしたから、2連敗した結果、57万円の損失となり、
残りは43万円となります(資金の57%を失いました)。
これは、勝率80%という高勝率の人でも、「月に一回は総資金の57%を失うリスクが高い」という証明なのです。
次に、これが現物売買(自己資金のみで、借り入れをしない)だとします。
1回の負けでの負け金額は、100万円×10%=10万円になり、
2連敗しますと、90万円×10%=9万円となります。
失われる資金は19万円ですから、19%の割合で資金を失うことになります。
信用取引よりは低い割合ですが、大きなマイナスであることに変わりはありません。
つまり、相場投資でもっとも大切なことが「利食いを遅く、損切りを早く」と
「資金管理」であることは、「意見」ではなく「数学的事実」です。
勝率は大した影響力を持ちません。
この事実を把握した上で、
「証券投資を投資(プラン)にするリスク管理」を実感し体に染み付かせることが、
すべてのトレーダーにとってなにより大切であることをご理解ください。
「トレードリスクの管理について、もっと具体的に知りたい」という方には
2010年5月に発刊した
「日経225先物・オプション システムトレード&スプレッド投資法」(日本実業出版社、2980円)
の4章の後半を読んでみて下さい。
なにかと難しいと言われる本書ですが、4章前半のシグナルの開発過程については
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ひまわり証券の田中空見子さんというかなり美しい女性とわかりやすく説明しています。